daisuke katayama


“人生の分岐点に立っている”意識からの作品作りと自分らしく歩きたい気持ち。自然体な一枚の手応えとは

“自然を愛するミレニアム世代のミュージシャン”daisuke katayama(エーチームグループ・エープラス)からニューアルバム『THE SUNNY ROAD JUNKTION』が届けられた。

2020年10月にアーティスト名を“ダイスケ”から“daisuke katayama”に改名し、2021年2月にアルバム『THE MIDNIGHT BONFIRE』をリリース。その後も「ぬるま夜」「Starry」「enren」と配信シングルを発表しながら、オーガニックな音楽性を追求してきた。約1年8ヵ月ぶりのオリジナルアルバムとなる本作には、タイトルにある“JUNCTION”という言葉通り、分岐点に立った人の姿を描いた楽曲が中心。そこにはもちろん、彼自身の現状も反映されているという。“ガットギターと歌”を軸にしたサウンドも印象的な本作の制作、そして、アーティストとしてのスタンスなどについて訊いた。


アーティスト名を変えて、自分が好きなことを突き詰めていこう

―― 2020年10月にアーティスト名を“daisuke katayama”に改名。キャリアにとっても大きな転機となったのでは?

そうですね。ちょうどデビュー10周年の時期だったんですけど、それまではわりとレールの上を歩いていた気がして。“良い、悪い”の話ではないんですが、流れに身を任せていたところがあったし、10周年のターニングポイントを迎えて、“もっとやりたいことがやったほうが楽しいよな”と思ったんです。アーティスト名を変えて、自分が好きなことを突き詰めていこうということですね。

―― やりたいことが明確になった、と。

はい。音楽活動を始めたのは20歳くらいなんですけど、当時は自分のことを理解できてなかった気がして。30歳を超えた頃からは、たとえばアウトドアだったり、自分が好きなものが見えてきたんですよね。それも含めて、やりたいことをやっていくというか。もちろん過去を否定するつもりはないし、本当にいい経験をさせてもらったんですが、この先を考えると、どうしても「好きなことをやりたい」という気持ちが強くなって。



daisuke katayama


―― なるほど。2021年2月にアルバム『THE MIDNIGHT BONFIRE』をリリース。改名以降の活動の手ごたえは?

この2年間は正直、しんどかったですね。ライブも思うようにできなかったし、旅にも行けなくて。2020年にメキシコに行く予定だったんですけど、それも中止になって。それから一度も海外に行ってないんですよ。その代わりキャンプをやるようになったり、あとは昔の旅の思い出を引っ張ってきたり…。今回のアルバム(『THE SUNNY ROAD JUNCTION』)の3曲目に入ってる「トリニダーの冒険」は、キューバ旅行の記憶がもとになってるんですよ。写真を見ながら、“また行きたいな”と思いながら曲を書きました(笑)。



“人生の分岐点に立ってるな”と感じることが多かった

―― ニューアルバムには、アウトドアブランドとのコラボによる「Starry」、野外にもピッタリのBluetoothスピーカーのCMソング「enren」などを収録。まず『THE SUNNY ROAD JUNCTION』というタイトルについて聞かせてもらえますか?

結果的にそうなったところが大きいんですけど、“人生の分岐点に立ってるな”と感じることが多かったんですよね。ここから何をやるか、何を選ぶかによって、人生が変わってくるというか。デザイン系の工房を立ち上げたのもそうだし、人間関係の出会いと別れもそうなんですけど、目の前にいくつもの道があって、「どれを選ぶ?」と選択しなくちゃいけない時期なんだなと。アルバムにも、そういうテーマの曲が多いんですよ。



―― JUNCTION=分岐点にいるdaisukeさん自身の現状が反映されているんですね。

そうですね。それは僕だけじゃなくて、多くの方が同じような状況にいると思っていて。仕事どうしよう?だったり、この先に対する不安を感じてる人は多いと思うんですよ。実際、自分も“どうやってミュージシャンを続けていけばいいのかな?”と考えたりもして…。すべての分岐点に光が差し込んでほしいという思いもありますね、このアルバムのタイトルには。世界中がそうですけど、チェンジを受け入れて、道を選ばないと先には進めないので。

―― たしかに。アルバム全体を通して、ギターと歌を中心とした音作りも印象的でした。すごくシンプルですよね。

今回は特にシンプルですね。いちばんカッコいいのは、デニムとTシャツだと思ってるんですよ(笑)。着飾る楽しさもあるし、そういう恰好も好きなんですけど、シンプルに見せるのがいちばんカッコいいじゃないかなと。サウンドに関してもそうで、ここ数年はどんどん音数が減ってるんですよ。今回のアルバムに関しては、自分が得意なギターと歌をしっかり聴いてもらいたいという気持ちもありました。



daisuke katayama


ガットギターを手にしたときにシックリきて

―― しかもほとんどの曲でガットギターを弾いていて。

ガットギターを弾くようになったのは、前作くらいからですね。アコギよりも自分に合ってる気がするというか、もともとピックで弾くのが得意じゃなかったんですよ(笑)。アコギも指や爪で弾いたりしてたんですけど、ガットギターを手にしたときにシックリきて。奏法も広がりましたね。さっきも話に出ていた「トリニダーの冒険」でラスゲアード奏法(コードを押さえ、爪で弦をかき鳴らす奏法)をやってみたり。一曲一曲、プロデューサーのGIRA MUNDOさんと一緒に弾き方やコード進行を追求した結果、“ライブでやりづらいな”という曲もありますね(笑)。

―― では、アルバムの新曲について。1曲目の「千里」は、自由に進んでいくことの怖さと希望が伝わってくる楽曲。アルバムのテーマとも繋がってますね。

実はこの曲、5、6年前に原型を作ったんですよ。そのときのイメージは“夕暮れの森”だったんですけど、それを“昼の日本海”に変えようと思って。今までは明るい太平洋みたいな曲が多かったんだけど、「千里」は防風林の松が見えるような風景ですね。歌詞に関しては…さっきも言いましたけど、“マジでどうしよう?”みたいな時期もあって。そういうこと、ないですか?

―― ずっと迷ってますね(笑)。そのうちに“もう戻れない”というところまで来てたり。

そうですよね(笑)。20代前半の頃はただやみくもに走ってれば良かったかもしれないけど、年齢を重ねるごとに、それだけじゃダメだなと思うようになって。何歳になってもそうなんでしょうね、きっと。

―― 歌詞の内容にはシリアスなところもありますけど、「千里」はどこか軽やかというか、体を揺らしたくなるような感じもあって。

うん、そこは意識していました。自分の悩みを吐露するだけの曲にはしたくなかったし(笑)、スッと聴けるようなサウンドがいいな、と。そこはGIRA MUNDOさんとも話し合ってましたね。



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―― GIRA MUNDOさんの南米音楽的なテイストは、このアルバムのポイントのひとつですよね。「うつろ」は切ないエモーションが滲む楽曲。

これは明確なテーマがあって。親戚に仲のいい夫婦がいたんですけど、奥さんが亡くなってしまったんです。最後のほうは会話もできなくなったみたいで…。亡くなったあと、みんなで昔の写真を見ているときに、“こんなに楽しい日々があったのに、最後はコミュニケーションも取れなくなっちゃったんだな”って改めて感じたんですよね。僕自身もショックだったし、救いが欲しいと思って書いたのが「うつろ」なんです。“また会えるから”という歌詞は自分の理想というか、“そうだったらいいな”という気持ちですね。

―― 「ぬるま夜-Album mix-」は、グルーヴが気持ちよくて。このサウンドメイクはどんなアイデアから始まったんですか?

ウクレレ、ローファイ、ラブソングを掛け合わせてみたかったんですよね。シンプルなコード進行もそうですけど、最近の流行を意識しているところもあります。

―― サブスクで聴かれることも考えながら?

それも意識してました。若い世代のリスナーにも聴いてもらいたいし、トレンドも取り入れながら。ローファイな音楽、チルホップも好きなんですよ。車の中でそういうジャンルの音楽を聴きながら、トラックに合わせて適当にメロディを歌ったり。

―― そこから歌が生まれることもありそう。「wagon」にも“ため息よりも鼻歌を”というフレーズがありますね。

「wagon」は唯一、アコギを弾いていて。いちばんメンタルがヤバいときに作ったんですよ、この曲(笑)。心の中で葛藤していて、不安もすごくあるんだけど、少しずつ“やるしかない。突き進んでいくしかない”という気持ちになってきて。最後にエンジンをかける音を入れたんですが、それは“出発の歌だよ”と伝えたかったからなんです。



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こういうインタビューでも、いろいろと気づくことがある

―― 曲を書くことで、daisukeさん自身の感情にも変化があるんですか?

ありますね。曲もそうだし、こういうインタビューでも、いろいろと気づくことがあるので。歌詞も最初からテーマが決まってるわけではなくて、書きながら“そうか、俺はこんなことを考えていたんだな”と理解する感じなんですよ。自分のことがわかってないんでしょうね、やっぱり(笑)。

―― その曲をリスナーと共有できるのもいいですよね。「wagon」はシンガロングできそうなパートもあって。

「千里」「wagon」はライブでお客さんと一緒に歌うところもイメージしてました。早くそういう状況が戻ってくるといいんですけど。


“それは他人事”では済まなくなってきた

―― まったく同感です。「Gluttony」の“重たい話はやめにしようぜって/笑ってキスをすれば 満たされていたはずなのにな”という歌詞も心に残りました。今の社会で生きてると、そうやって楽しくやり過ごすこともできないと感じるので。

そうなんですよね。10年以上前に書いた「惑星プラトニック」という曲があって。“世界のみにくさも/リモコン一つで消せる”という歌詞からはじまるんですけど、そのときは、“世界で何が起きても、関係ない”みたい気持ちだったんですよね。でも、震災が起きたり、コロナがあったり、いろんな出来事を経験するなかで意識も変わってきて。今の自分の世界観を改めて曲にしたいと思ったんですよね。何て言うか、“それは他人事”では済まなくなってきたんですよ。たとえばコロナ対策にしても、自分ひとりの話ではなくて、みんなでやらなくちゃいけないし。



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―― どうしても視野が広がりますよね。「惑星プラトニック」と「Gluttony」の変化を対比してみるのも興味深いと思います。いい意味で矛盾しているといいますか。

矛盾してますね(笑)。でも、それでいいと思ってるんですよ。そのときに感じたことを切り取るべきだし、嘘は歌えないので。


教会の中に光が差し込むようなイメージに

―― なるほど。アルバムの最後に収められている「Sunny road」は、曲名通り、明るい日差しが感じられる楽曲。なんだかホッとしました。

救いじゃないけど、最後は前向きに終わりたかったので。この曲は、大切な存在、愛しい人とようやく会えたときの気持ちを歌っていて。この2年間、同じような体験をした方も多いと思うんですよね。“コロナ離婚”みたいな言葉もありましたけど、この状況のなかで、恋愛に限らず“そばにいる人の大切さがわかった”という人もいたはずなので。「Sunny road」は、カコイミクさんのコーラスも素晴らしいです。最初は自分の声だけでやろうとしたんだけど、なんか違うなと思って。カコイさんに歌ってもらったら、教会の中に光が差し込むようなイメージになったんです。

―― 楽曲を表現するために必要な選択をした、と。

以前は自分ひとりで構築するのが好きだったんですけど、最近はコーラスを人に任せることも多くて。曲の説得力が増すんだったら、そっちのほうがいいじゃないですか。そのあたりはだいぶ柔軟になってきましたね(笑)。



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いわゆるシンガーソングライターっぽくないことをやりたい

―― 12月には東京、大阪でアルバムを携えたアコースティックツアー『Acoustic Journey 2022 THE SUNNY ROAD JUNCTION』を開催。

ライブに関していうと、いわゆるシンガーソングライターっぽくないことをやりたいという気持ちもあって。アコギの弾き語りの枠にこだわらず、ストンプボックスやチャイムを使ってリズムを出したり、会場によってはギタリストやストリングスと一緒にやったり、いろんなスタイルでやってみたいんですよね。そういう意味でも、今回のアルバムはやりがいがあると思います。

―― 音数が少なくてシンプルな構成なので、ライブでの表現も広がりそうですよね。ちなみにdaisukeさん、最近もキャンプに行ってるんですか?

行ってます!心のデトックスじゃないけど、自分にとっては大事な時間なんですよね。最近、キャンプをやる人が増えていて。それはいいことだなと思ってるんですけど、僕はできるだけ人がいないところに行くようにしてるんですよ。大勢でワイワイというより、静かに過ごしたいというか。ゆっくりお酒を飲んだり、ギターを弾いたりできるのもよくて。一時の趣味ではなくて、一生やっていくだろうなと思ってます。


リリース情報

2022.10.26 ON SALE
ALBUM『THE SUNNY ROAD JUNCTION


ライブ情報

Acoustic Journey 2022 THE SUNNY ROAD JUNCTION
[2022年]
12/9(金) 東京都:duo MUSIC EXCHANGE
12/15(木) 大阪府:Music Club JANUS



プロフィール

daisuke katayama
ダイスケ カタヤマ/神奈川県藤沢市出身。日本テレビ系情報エンタテインメント番組「ZIP!」内コーナー「ZIP!スマイルキャラバン」にレギュラー出演開始と共に日本中を旅して誰よりも多くの人と出会い、さまざまな経験をしてきた。日本中や東南アジア、カリブ海など旅をしてキャンプや山登りなどのライフスタイルで感じたことを曲にしアコースティック・ギターやウクレレをベースにしたサウンドで表現している。旅に出たような、一歩踏み出したくなるような音楽がそこにある。ものづくりにも非凡な才能を秘め、D.I.Yで部屋作りしたり、イラストが得意でさまざまな作品がある。独創的な感性を持ち、創作し、描き、巧みに弦を弾く。なによりもエモーショナルな歌声が魅力のアーティスト。



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daisuke katayamaのニューアルバム。“人生の分岐点に立っている”意識からの作品作りと自分らしく歩きたい気持ち。自然体な一枚の手応えとは – THE FIRST TIMES
daisuke katayama(エープラス)、配信シングル「ぬるま夜」リリース決定|エーチームグループ出演者情報
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